スーパー白鳥乗車インプレッション 後編

by:盛アオ

「HEAT789」の真価を問われる青函トンネル内を、列車は時速140キロで走行しております。

12月以降、スーパー白鳥に乗車される方々にとって一番気になっているのがこの青函トンネル
内での静粛性だと思うわけですが…
現行の485系や客車では客室内でも大声を出さないとまともに会話できなかったわけですが
789系では普通の声でも十分話ができるまでに改善されておりました。
また、デッキ内も気密構造の効果で、それまでの車両では耳をつんざくほどの轟音に包まれて
いたのに対し、この列車ではそういった騒音が可能な限りシャットアウトされ、客室同様に
会話ができるようになっていたのは感動的でした。

789系の開発で一番力が注がれた部分なだけに期待通りの効果だった点は大いに評価
できることだと思います。

また、同乗してくださったJR北海道の技術者の方から、12月までにトンネル内のレールに生じた
波状磨耗をきっちり削るなど、更なる静粛性を目指して軌道の整備も万全に行っていくという
お話を聞くことができました。

やがて10分ちょっとで列車は吉岡海底駅に到着しました。

140キロでの高速走行もあってか、トンネル突入時からそれほど時間の経過を感じさせない
ままの海底駅到達なだけに少々驚いてしまいましたが…
営業運転時には実際に停車する列車もあるということで、ホームには789系用の停止位置
目標が新たに設置されておりました。

時間調整の運転停車ということで、残念ながら下車は果たせませんでしたが、数分間の停車
の後、再び驚異的な加速で海面下240メートルの最深部へ向けて突っ走っていきます。
 

最深部を境に連続上り勾配に差し掛かっても140キロ前後のトップスピードは衰えることなく
途中で竜飛海底への運転停車を含めつつも30分ちょっとの所要時間で本州側出口に到達して
しまいました。
やがて、「本州に唯一存在するJR北海道駅」の津軽今別への停車の後、津軽線との合流
地点である中小国信号所に向けて減速を始めていきました。

運転室内からはATCによる「停車位置に注意してください…」という電子音声が聞こえてきます。

中小国信号所に停車して北海道へ渡る貨物列車をやり過ごします。
やってきたのはEH500でした。

停車中には「JR北海道の営業エリアを離れ、JR東日本の営業エリアへと入ってまいります」
という丁寧な車内放送が流れてきました。

「ATC解放」の標識の奥には3灯式の信号機が見えています。

先頭車の貫通扉にはワイパーが設置されているわけですが、手動で動かす仕組になって
おりました(笑)
ストッパーを外すと、誰でも簡単にワイパーを動かせます。
この日は青森県内で軽く雨が降っていたので、ワイパーを動かして雨天でも良好な前面展望
を楽しむことができました。
この後も津軽線の小駅で運転停車を繰り返し、列車は約3時間半かけて青森駅に到着
しました。乗務員、関係者、そしてし乗車共々、約20分間の休憩時間に入ります。

試乗列車は6番線に到着したわけなんですが、ちょうどこの時間には1番線に定期のスーパー
はつかり、その隣の2番線にはJR東日本貸出中の789系HE-101・201編成が停車し、営業
運転時には見ることができない3本の並びを眺めることができました。

(この日はHE-101・201編成を使用して東北本線側でも試乗会が行われていたそうです)
 

この青森駅での停車中に8号車の運転席付近に立ち寄ってみると、運転室のドアが開いたまま
になっておりました。そこで、近くにいた検修要員のスタッフの方にダメ元で「中の写真撮って
もいいでしょうか?」とお願いしたところ、「機器に触れないんでしたら中に入っちゃっていいですよ」
とのお返事が…(^_^;)

…というわけで幸運にも789系の運転台にあがることができちゃいました。
運転席に腰掛けてみたところ、キャノピースタイルで若干窮屈な印象でしたが前面、側面とも
眺めは非常に良好です。
北海道独特の大型ワンマスコンハンドルが左手の位置に配され、ATC対応でサイズが大きめ
になっている速度計も設置されておりました。
この運転室公開はまったく予期せぬ出来事だっただけに、実際に見学できた方は5・6人程度
しかいなかったようです。

クランク状になっている先頭車の通路です。この辺のレイアウトは他のJR北海道の特急車と
ほぼ共通のようです。
開放された状態でロックされていた5号車の貫通扉のアップです(笑)
この日もこのように「試運転」のヘッドマークで運転されておりました。
スーパー白鳥のヘッドマークを期待していた方も多いようですが…残念でした。
4号車山側の公衆電話室兼中間運転台です。
試運転時には運転台部分が露出された状態で走っておりましたが、当日はこのように吸音板
によって閉ざされておりました。
2号車にある喫煙スペースです。
空席紹介でご覧になればお分かりかと思いますが、スーパー白鳥は指定席には喫煙席の設定
がありません。
そういった中で、こういうスペースの存在価値は結構大きいものがあると思います。
定員確保の問題上不可能かもしれないのですが、できればもう少しだけ広くとっても良かったの
ではないでしょうか。
フリースペースの配置のセンスはJR九州の特急車にはかなわないかも…(笑)
列車は進行方向を変えて再び函館に向けて走行を開始しました。
往路の車内であらかじめ配られた駅弁の包みを開いてみることにします。
この試乗会にあわせて、789系がプリントされた青函トンネル弁当を頂くことができました。
包みを開けるとイクラに松前漬にいかめしと…北海道の味覚がふんだんに盛り込まれた内容に
なっていて、非常においしくいただくことができました。
往路に比べ、運転停車の回数が減った復路は快調に飛ばしながら津軽線を越え、津軽海峡線へ。
485系のはつかりは青函トンネルの下り勾配を利用して140キロ運転を行うという話を聞いた
ことはありますが、この789系は海峡線区間に入った時点で加速を始め、地上区間で既に140
キロに到達しているそうなのです。
さらに、関係者の方から、往路のトンネル進入時に設計最高速度の時速145キロまで出して
走ったということを明かされて、驚愕してしまいました(^_^;;;;

列車は相変わらずの140キロ走行でトンネル内を快走しております。吉岡海底駅の手前には
海底駅が近づいていることを知らせるLEDのドリームサインというものが車窓を彩るわけなん
ですが、140キロの高速走行でははっきりとその映像を確認することができません(^_^;)
どうやら快速海峡の運転速度にあわせて設定されているんだと思うんですが、青函トンネル通過
列車の大半が140キロ走行をする12月以降、設定を変えた方がいいのかもしれません。

客室の妻面上部にはJRの新型特急では必須装備となったLEDの案内装置があります。
今回の試乗会ではこれが実際に動作することはありませんでしたが、営業運転時は列車の
案内や文字ニュース放送、そして青函トンネル走行時は列車の現在位置をイラストで表示
することができるようにプログラムされているそうです。
50系客車のLED位置表示をバージョンアップさせた形になるみたいですね。
往路同様、2つの海底駅で運転停車を行います。吉岡海底駅では終焉迫る快速海峡とすれ
違いました。
海峡の乗客の方々は隣に停まった見慣れない新型特急を物珍しそうに眺めておりました。
それを見てちょっとした優越感が…(ぉぃ)
青函トンネルを抜け、北海道に戻ってきました。やはり海峡線のトータル面でスピードアップ
を図っただけあって、トンネルの長さを感じさせることはあまりありませんでした。
上り勾配をスピードを落とすことなく、高速度を維持しながら駆け上がっていく様子は頼もしさを
感じずにはおれないでしょう。
「まもなく木古内です。後続の特急はつかりの通過待ち合わせのため、長時間停車します」
というアナウンスが流れ、列車はまたもや木古内駅で小休止することになりました。
程なくして、隣のホームを485系3000番台のはつかりが通過していきます。
海峡線の次代を担う両雄をカメラに収めることができました。
屋根ナシでホームの幅が狭いだけあって、ホームを隔てた並びでもきれいに撮れたと思います。
こうして、試乗会列車は14:58定刻で函館駅の新設された8番ホームに到着しました。
隣にはスーパー北斗のキハ281系や、これから本州へ向かう485系3000番台のはつかりの両
先輩が789系を出迎えます。

函館駅到着直前の車内放送(KAZUさん録音)
mp3形式 1分20秒 80kb
 

そして、青森からやってきた我々は、函館駅で発車待ちをしていたはつかり26号に乗って青森へ
帰還するわけです。
先ほど、789系でその素晴らしい乗り心地を経験してきたのでそれと比較するかのようにじっくりと
485系の走りっぷりを味わうことにします。

江差線内ではそれほど大差はなかったのですが、やはり海峡線に入ってからその違いがはっきり
とわかってしまいます。
軌道の波状磨耗の轟音、140キロ走行で大きな唸りを上げる直流モーター、そして老朽化から
くる車体のビビリ振動など…789系に乗っていて有り得なかった感覚が次々と出てくる感じでした。
苦痛…というほどでもありませんが、気にせずにはいられない程度であることは言うまでも
ありません。あらためて789系の素晴らしさをしみじみと感じてしまいました。

JR北海道がまさに「社運をかけて導入した」と表現してもおかしくないくらいの意欲作である789系を往復で時間をかけて体験できたわけ
ですが、青函トンネルの特性を踏まえた上で、持てる技術を惜しげもなく盛り込んで設計された車両だけあって現行の車両とは比べ物に
ならないくらいの快適な乗り心地を楽しむことができました。
また、同時にJR北海道として初めて本格的に本州へ乗り入れる定期列車ということもあり、北海道らしさが顕著に現れている車両で
あることを改めて実感させられます。
その印象を本州で大々的にアピールし、北海道新幹線の早期実現につながる大きなステップとして飛躍してくれることを祈るばかりです。
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